Copyright (C) 2016 Rhapsodic Heart All Rights Reserved.


【J.GARDEN44スペシャルSS】

 珍しく廣也が寝坊している。
 なにも出なくなってもイかされたのは碧の方だが、廣也よりも先に目が覚めてしまった。
(まあ、それだけ疲れてるってことだよな……)
 仕事帰りに碧の家にきて、夕飯を作ってから一緒に風呂に入った。それから朝方までエッチをすれば、疲れもするだろう。休みだからわざわざ起こすこともない。
 ベッドからそっと抜け出た碧はパジャマを羽織り、キッチンへ向かった。
「腹が減った……」
 時計はちょうど昼の十二時。腹が減って目が覚めるはずだ。
 冷蔵庫を開けるが、そのまま食べられるものがない。
 廣也と付き合うようになってから、アルコールとミネラルウォーター以外にも、冷蔵庫にはなにかしらの食材が入っている。が、碧は料理ができない。
「味噌があったところで、味噌汁も作れないしな……」
 たまごとベーコンもあるが、料理ができない碧には食材をどう調理すればいいのか分からない。
 いつもは常備菜の他にも食パンや納豆とか、そのまま食べられるものも入っているが、買い物に行くのは廣也が休みの週末だ。冷蔵庫の中は一週間分の食材をほぼ使い切り、スッキリしていた。
「あ、ヨーグルトがある」
 無糖のプレーンヨーグルトは碧のデザート用だ。カットフルーツと混ぜて冷凍庫で冷やせばフローズンヨーグルトが作れる。どんなフルーツにも合うのがいい。
 冷凍室を開けたら、カットして潰したバナナが入っていた。
「今日は濃厚バナナアイスか」
 腹がグゥゥーと鳴った。
 フードプロセッサーがあればもっと滑らかに作れるらしいバナナアイスは、潰して冷凍したバナナとヨーグルトを混ぜ合わせれば濃厚なバナナアイスが作れる。それをさらに凍らせたら、フローズンヨーグルトアイスになるのだ。
 ジップロックに入っているバナナを冷凍庫から出した。潰した冷凍バナナをそのまま食べるよりも、バナナアイスにした方が美味しいに決まっている。ヨーグルトと混ぜるくらいなら、碧にもできそうだ。
 ちらりと背後を振り返った。廣也が起きた気配はない。
 ジップロックからラップに包まれているバナナを出した。ラップを外そうとしたら、ラップごと凍っていて剥がせなかった。
「これ、どうやってラップを取るんだ?」
 トースターはないが、電子レンジはある。
 加熱すればラップも剥がれるだろうとレンジに入れた。
 冷凍チャーハンをレンジで温めるときは三分だ。とりあえず三分にセットしてボタンを押す。
「よし、これでいいだろう」
 ラップを取れば、あとはヨーグルトと混ぜるだけだ。
「碧さん、おはよう」
「おわっ!」
 ふいに背後から声がしたかと思えば、廣也が起きてきた。
「そんなに驚かなくても」
 あくびをしながらキッチンに入ってきた廣也は、冷蔵庫からミネラルウォーターを出しながら、電子レンジを見た。
「なにをチンしてるの?」
「……冷凍バナナ」
「バナナを温めて食べるの?」
「いや、ラップが凍って取れないから、チンすれば剥がれるかと思っ……」
 と喋っているうちに、電子レンジがチン! と鳴った。
 レンジを開けたら、ラップから湯気がでていた。
「碧さん、そのまま触ったら火傷するから」
 ミトンを手にした廣也は皿の上に冷凍バナナを載せた。いや、もう冷凍ではない。ホットバナナだ。
「何秒にセットした?」
「三分」
 答えれば、微妙な顔をされた。
「冷凍チャーハンはいつも三分温めるだろ」
 聞かれてもいないのについ言い訳をしてしまう。
「腹が減ったからバナナアイスを食べようと思って……」
 決まりが悪くてぼそぼそ呟けば、くすっと笑われた。
「起こしてくれてよかったのに」
「熟睡してたし、疲れてるだろ」
「寝かせといてくれたんだ?」
 顔を覗き込まれて言われれば、なんだか恥ずかしくなった。
「そ、そのバナナでヨーグルトアイスは作れるか?」
 誤魔化すように言えば、またくすりと笑われた。
「これは解凍しちゃったから、そうだな……バナナパンケーキにする?」
「バナナパンケーキ……美味そうだな」
 また腹がグゥゥーと鳴った。
「すぐに作るから、碧さんも手伝って」
 冷蔵庫から卵を出して渡せば、廣也はボウルに卵を割り入れた。渡された泡立て器で碧が卵を混ぜ、その中に、ホットバナナが投入された。 碧が混ぜたものを、廣也はプライパンで焼いていく。
「スゴいな……」
 きれいな焼き目のついたバナナパンケーキはあっと言う間に完成した。
 碧がパンケーキの皿を運び、コーヒーメーカーをセットしているうちに、廣也はベーコンを焼いて、サラダまで作った。
「ヨーグルトアイスはどうするんだ?」
 食後のデザートは重要だ。
 碧がバナナを解凍したから、濃厚バナナアイスはもう作れない。
「冷凍ベリーがあるから、ヨーグルトに苺ジャムを混ぜて、ミックスベリーアイスにする?」
 その名前だけで、もう涎が出そうだ。
 返事をしなくてもゴクリと喉が鳴れば、廣也は手早くアイスを作る。
 準備を終えた碧は他にすることもなく、ダイニングテーブルに着く。 冷凍庫にボウルを入れた廣也も、碧の向かいに座った。
 手を合わせれば、廣也と目が合う。
「温かいうちに食べて」
「いただきます」
 フォークで切って口に入れたパンケーキはふわふわのふかふかだ。バナナと卵だけで作ったとは思えないほど、ひとくち食べたら止まらない。
「美味い!」
「気に入った?」
「むちゃくちゃ!」
「碧さんが冷凍バナナを加熱したおかげだね」
 くすくす笑いながら言う廣也は、碧の皿に自分のパンケーキを載せた。
「食べないのか?」
「あとで食べるよ」
 廣也はにっこり笑いながら言う。
「また焼くのか?」
 冷凍室にあるのはミックスベリーアイスだけで、冷凍バナナはもうない。
 皿に追加された廣也の分のパンケーキを頬張れば、「俺はあとでプラムを食べるから」と微笑まれた。
 碧は顔が熱くなる。
 廣也がいうプラムは、碧の雄のことだ。口淫するとき、プラムみたいに美味しそうだと言われたことがある。
 つまり、朝ごはんを食べたらエッチをしようと誘っているのだ。
 朝方までヤッたのに、まだ足りないらしい。
 遅漏の廣也は精力絶倫で、彼が一回イくまでに、碧は何回もイかされる。最後は絶頂を極めた状態がずっと続き、ドライに達してしまえば深い快楽はいつまでも続く。
 そうなるともう、なにも考えられなくなるのだ。
「俺はプラムよりも、ミックスベリーアイスの方がいい」
「よかったら、俺の分も食べる?」
「いいのか?」
「もちろん。碧さんにはお腹いっぱい食べてもらって、体力を回復してもらわなきゃだしね」
(そうくるか……!)
 しかし、デザートの誘惑には逆らえない。
 碧は廣也の分のデザートを食べながら、アイスで冷たくなった口で、廣也の雄を舐めたらどうなるか、想像したら、口もとがニヤける。
 やられっぱなしなのは性分に合わない。
「俺も、これを食べたらプラムを食べる」
(すぐにな)
 碧は蠱惑的な笑みを唇にのせた。                      
             
END